2014年3月31日、念願だったトライアンフのスクランブラー900が納車された。マットカーキグリーンの燃料タンクに、右側2本出しのアップマフラー。1960年代の英国製オフロードバイクを思わせる、無骨なスタイリングが魅力の一台だ。
そもそも、このバイクが欲しくなったのは、映画『大脱走』に登場するスティーブ・マックイーンのトライアンフに憧れていたから。映画好きの僕にとって、あのオートバイは特別な存在だった。スクランブラーなら、普段の街乗りでも、少しはマックイーンの気分を味わえるかもしれない!
購入後はシングルシートやゼッケンプレートを装着し、山の中を走り、最後は映画『ジュラシック・ワールド』の影響でARROWのマフラーにまで交換。振り返ってみると、ずいぶん映画に影響されたカスタムばかりだった。
そんなスクランブラーとの付き合いは約10年間。今回は当時書いていた6本のブログをまとめ、購入した経緯から乗り味、カスタム、そして手放すまでの思い出を振り返ってみようと思う。

この記事の目次
トライアンフ スクランブラー900を購入!きっかけは映画『大脱走』

実は、最初からスクランブラーを探していたわけではない。当初の第一候補は、トライアンフの「ボンネビルT100 スティーブ・マックイーン エディション」。マックイーンへのオマージュとして発売された限定モデルで、これがどうしても欲しかったのだ。しかし、国内の販売店をいくら探しても見つからず、ショップに問い合わせても望みは薄そうだった。
そこで目をつけたのが、マットカーキグリーンのスクランブラー900。右側に大きく張り出したアップマフラーは、映画『大脱走』に登場するトライアンフTR6を思わせるデザインで、当時のトライアンフのカタログもマックイーンを強く意識したものだった。むしろ、こっちの方が僕の好みに合っているんじゃないか? そう考え始めると、もうスクランブラーが欲しくて仕方なくなってしまった。
ただし、カラーは絶対にマットカーキグリーン! ほかの色を買うつもりはなかったので、全国の販売店に電話をかけて探し回ったものの、これがなかなか見つからない。半ば諦めかけていた頃、近所のレッドバロンに立ち寄ってみると、なんと東北に1台だけ在庫があるとのこと。数日後には実車を取り寄せてくれるという、思いがけない展開になった。

さっそく店頭で確認すると、車体の状態は良好。スキッドプレートなど10万円以上のカスタムパーツが装着されていたのも嬉しい。ただ、諸費用を含めると予算を10万円ほどオーバーしてしまう。これは困った……と思いながらも、実際に跨ってみると、写真で眺めていたときとはまるで違う迫力があった。
結局、購入を決意。2014年3月31日、友人のツヨポンに販売店まで送ってもらい、無事に納車となった。帰宅してから、それまで乗っていたW650と並べて記念撮影。英国車をルーツに持つ2台だけど、こうして並べると、それぞれ違った魅力がある。いやあ、どっちもカッコいい!
トライアンフ スクランブラー900をインプレ!865ccエンジンの乗り味と足つき

スクランブラーを購入してから約3ヶ月。街乗りやツーリングで使ってみて改めて感じたのは、とにかく見た目の存在感が大きいバイクだということ。マットカーキのタンク、ブロックパターンのタイヤ、そして車体右側を通る2本出しのアップマフラー。どこから眺めても、1960年代のスクランブラーを現代に蘇らせたようなスタイリングだ。
正直なところ、乗ってみると気になる部分もいくつかある。それでも、見た目がカッコいいので許せてしまう。僕にとってスクランブラーは、そんなオートバイだった。
270度クランクの空冷バーチカルツインが面白い!

エンジンは865ccの空冷バーチカルツイン。以前試乗したボンネビルはスムーズでよく回るエンジンだったけど、スクランブラーは270度クランクを採用していて、もう少し不規則な鼓動感が楽しめる。純正マフラーでも歯切れの良い音がして、アイドリングしているだけでなかなか心地よい。
ただし、低回転では少しもたつく印象があり、ある程度エンジンを回して走った方が気持ちいい。以前から乗っていたW650と比べても、ずいぶん異なる性格のエンジンだった。W650の360度クランクは滑らかで扱いやすく、スクランブラーは鼓動感が強い。それぞれに良さがあって、乗り比べるのが楽しかった。
また、当時のW650はキャブレター仕様だったので、インジェクションを採用したスクランブラーの始動性にも期待していた。購入直後は朝でもセル一発で始動していたものの、冬になるとチョーク操作が必要になることも。最新のバイクほど気楽ではない部分もあったけど、それも含めてトライアンフらしい気がした。
スクランブラー900の足つきと取り回しは?

車体は思っていた以上に大柄だったものの、足つきはそれほど悪くない。僕の場合、エンジニアブーツを履いていれば両足のかかとまで地面についた。ただし、右側に大きく張り出したアップマフラーが少し邪魔になるうえ、車体の高い位置に重量物があるためか、停車中は独特の重さを感じた。
一方で、このアップマフラーこそがスクランブラー最大の魅力でもある。少々扱いづらくても、見た目が良いので文句は言えない。少なくとも僕は、そういうバイクだと割り切って乗っていた。
ちなみに、スクランブラーを購入した理由には、映画撮影も関係している。当時は友人たちと自主映画を撮っていて、ロケ地になるのは山や森ばかり。「買ったバイクは必ず映画に出す!」というのがナカモトフィルムのポリシーだったので、未舗装路も走れるスクランブラーは撮影用のバイクとしても理想的だったのだ。
スクランブラー900をシングルシートにカスタム!純正シートとの違い

スクランブラーを購入して半年ほど経った2014年11月、まず手を加えたのがシートだった。純正のダブルシートも悪くないのだけど、車体後部が少しボテッとしているのが気になっていた。映画『大脱走』のトライアンフのように、もう少しすっきりしたスタイルにしたかったのだ。
ちょうどW650がタンク塗装を終えて帰ってきた頃で、今後の二人乗りはW650に任せることに。そこで購入したのが、トライアンフ純正の「シングルシート&ラック」。ブラックとホワイトのパイピングで迷ったものの、『大脱走』のTR6に近づけたくてブラックを選んだ。

取り付けてみると、これが想像以上にカッコいい! シート後方がすっきりして、全体のシルエットがずいぶん引き締まった。小さなラックも昔の英国車らしい雰囲気で、まさに理想としていたスタイルに近づいた。
ただし、乗り心地は明らかに悪くなった。純正シートは低反発枕のような柔らかさだったのに対して、シングルシートはかなり硬い。さらにシート形状の違いで足つきも少し悪くなり、以前はベッタリ地面についていたかかとが浮くようになってしまった。それでも、しばらく乗っているうちに慣れてしまったし、何より見た目が気に入っていたので後悔はなかった。
これで少しはマックイーンのTR6に近づいたはず。気分だけなら、映画のラストシーンで鉄条網を飛び越えられそうだ。もちろん、実際には絶対に無理だけど!
スクランブラー900にゼッケンプレートを装着!スティーブ・マックイーンの「278」を再現

スクランブラーを購入したら、絶対に取り付けたかったパーツがもうひとつある。それが、サイドに装着するゼッケンプレートだ。
僕は昔からスティーブ・マックイーンの大ファンで、彼がレースで使用していた「278」というゼッケンに憧れていた。19歳の頃にカワサキ250TRを購入したときから、いつか自分のバイクにも同じ番号を付けたいと思っていたのだが、なかなか機会がなかった。スクランブラーなら、これ以上似合うバイクもないだろう!
そこで探し始めたのが、トライアンフ純正オプションのナンバーボードキット。しかし、僕が購入した頃にはすでに生産終了となっており、国内ではほとんど手に入らない状態だった。ヤフオクやeBayを半年ほどチェックしても出品されず、最終的にはアメリカの通販サイトから個人輸入することにした。

当時利用したのはBikeBanditというバイクパーツ通販サイト。英語ばかりで少し不安だったけど、思い切って注文してみると、約2週間後にカリフォルニアから無事に到着した。
ただし、購入価格には驚いた。ナンバーボード本体が約8,000円なのに、送料がなんと12,000円!
送料の方が高いじゃないか!!!
それでも、長年探していたパーツなので仕方がない。さっそくシートやヒートガードを外して取り付け、最後に「278」のステッカーを貼って完成! ただの黒いプレートに数字を入れただけなのに、これだけで車体の雰囲気が大きく変わった。

シングルシートとの相性も抜群で、一気にビンテージモトクロスのようなスタイルに。ゼッケンのサイズをあまり考えずに購入したので、数字がプレートにギリギリ収まる大きさになってしまったけど、それも含めて気に入っていた。
トライアンフ スクランブラー900でオフロード走行!林道での乗り味をレビュー

納車から約1年が経った2015年5月、スクランブラーで本格的にオフロードを走ってみることにした。それまでもフラットダートを走ったことはあったものの、転ばないようにゆっくり通り抜ける程度。せっかくスクランブラーに乗っているのだから、もう少し積極的に未舗装路を楽しんでみたかったのだ。
この日はバイザー付きのジェットヘルメットにアーミー系のゴーグル、バンダナ、モトクロスグローブという装備。もちろん車体には278のゼッケンプレート! すっかりビンテージモトクロスの気分になって、山の方へ走りに行った。

最初は恐る恐る走っていたのだけど、慣れてくると意外なほど走りやすいことに気づいた。車体は重たいし、足つきも抜群とはいえないので、正直W650の方が走りやすいんじゃないかと思っていたぐらい。しかし、スクランブラーはサスペンションが路面の凹凸をうまく吸収してくれるため、フラットダートやなだらかな林道なら思っていた以上に安定して走れる。
もちろん、大きな石が転がっているような場所では苦戦するし、セロー250のような軽量オフロードバイクと比べるものではない。それでも、ただスクランブラー風のデザインをしただけのバイクではないことがよく分かった。これなら、映画の撮影で山の中に入るときにも頼りになりそうだ。
ただし、転倒だけは避けたい。車体がかなり重いため、ひとりで山奥に入って倒してしまったら、起こすだけでも大変なことになりそうだった。

それにしても、山の中に停めたスクランブラーは本当にカッコいい! マットカーキのタンクにブロックタイヤ、アップマフラー、そして278のゼッケン。街中で眺めているとき以上に、こういう場所が似合うオートバイだった。
スクランブラー900のマフラーをARROWに交換!映画『ジュラシック・ワールド』仕様へ

2015年8月、映画『ジュラシック・ワールド』が公開された。僕は公開初日にナカモトフィルムのメンバーと映画館へ。もちろん、作品そのものも楽しみにしていたけど、もうひとつ大きな理由があった。クリス・プラット演じる主人公オーウェンの愛車として、僕と同じマットカーキグリーンのスクランブラーが登場するのだ!
映画の序盤からスクランブラーが登場し、中盤には恐竜と並走するシーンまである。自分の愛車がハリウッド映画のスクリーンを走っているというだけで、もう大満足! しかも劇中でラプトルの注意を引くためにアクセルを吹かすシーンがあり、そのときのマフラーサウンドがとにかくカッコよかった。
劇中車両に装着されていたのは、イタリアのARROW製フルエキゾーストシステム。映画館の大音響であの音を聴いてしまったら、もう我慢できない。自分のスクランブラーにもARROWを装着することを、その場で決意したのだった。
純正マフラーとARROWフルエキゾーストを比較!

もともとスクランブラーを購入した理由のひとつが、純正の2本出しアップマフラーだった。車体の高い位置を通るクロームメッキのパイプは、60年代の英国製スクランブラーを思わせるデザインで、僕もかなり気に入っていた。正直、これを交換してしまうのは少しもったいない気もした。
ところが、ARROWを取り付けてみると、これがまた素晴らしい! 2本出しから1本出しになったことで車体右側がすっきりし、ステンレス製のサイレンサーにはARROWとTRIUMPHのロゴ。純正のクラシックな雰囲気とは違い、少しレーシーな印象になった。
しかも、見た目以上に驚いたのが重量の変化だった。

当時の製品説明によると、ARROWのフルエキゾーストは純正マフラーに比べて約70%も軽量化されているとのこと。実際に跨ってみると、これまで感じていた右側に傾くような重さがほとんどなくなっていた。マフラーの張り出しも減ったので足つきまで良くなり、スクランブラーがひと回り軽いバイクになったような感覚だった。
取り外した純正マフラーを持ってみると、これが驚くほど重たい。あんなに重いものを車体の高い位置に取り付けていたのか! 軽量化の効果をこれほど実感したカスタムは、なかなかなかったと思う。
ARROWマフラーの排気音と乗り味はどう変わった?

さて、肝心の排気音はどうだろう。映画館で聴いた、あの迫力あるサウンドを期待しながらエンジンを始動してみた。
「ドドドドッド……」
……あれ? 思っていたよりも静かだぞ。
純正マフラーと比べれば多少迫力はあるものの、映画館で聴いた音とはずいぶん違う。正直、最初は少し拍子抜けしてしまった。
ところが、実際に走り出すと印象は一変した。エンジンの吹け上がりが明らかに軽くなり、それまで少しもたつく印象のあったスクランブラーが、ずいぶん軽快に走るようになったのだ。当時の説明では専用セッティングによって約5馬力ほどパワーアップするとのことだったけど、数値以上にアクセルを開ける楽しさが増したように感じた。
気になったのは燃費で、僕の乗り方ではツーリングで20km/L以上走る一方、街乗りでは17km/L程度。以前より少し悪くなってしまったものの、軽量化とエンジンの変化には十分満足していた。
ちなみに、当時バッフルを外した状態でも排気音を確認したところ、こちらはまったくの別物だった。アイドリングから「ババババババッ!」と迫力のあるサウンドが響き、映画館で聴いた音に近い印象。あの音を聴いたときは、思わず興奮してしまった!
こうして僕のスクランブラーは、『大脱走』のマックイーンに憧れて購入した一台から、『ジュラシック・ワールド』のオーウェン仕様へと進化した。映画を観てバイクを買い、また映画を観てカスタムする。昔から、僕のバイク選びはそんなことの繰り返しだ。
約10年間乗ったトライアンフ スクランブラー900を売却。最後のお別れ

2014年に購入したスクランブラーも、気がつけば約10年間の付き合いになっていた。マットカーキグリーンの車体を探し回ったことも、シングルシートを取り付けた日のことも、278のゼッケンをアメリカから取り寄せたことも、今となっては懐かしい思い出だ。
そんなスクランブラーを、2024年に手放すことになった。
ほかにも大型バイクを複数所有するようになり、ここ数年はスクランブラーに乗る機会が減っていた。維持費のこともあって、悩んだ末に売却を決意。最終的にはカチエックスを利用して、714,000円という満足のいく金額で買い取ってもらうことができた。
ただ、実際に引き取りの日を迎えると、想像していた以上に寂しかった。
あれだけ全国を探し回って、ようやく手に入れたマットカーキグリーン。映画に憧れて少しずつカスタムを重ね、気がつけば10年も所有していた。最近はあまり乗っていなかったとはいえ、いざ手元からなくなると思うと、いろいろな思い出が蘇ってくるものだ。
売却価格には満足していたし、手放した判断を後悔しているわけでもない。ただ、あれほど気に入っていたオートバイが自分のもとからいなくなるのは、やっぱり寂しい。
ありがとう、スクランブラー君!
次のオーナーのもとでも、元気に走っていてほしい。
関連記事|約10年間乗ったトライアンフ スクランブラーを71万円で売却した話(Webikeプラス)

※本記事は2014〜2015年に公開した6本のブログ記事と、2024年の売却記録をもとに再編集したもの。紹介しているのは空冷865ccエンジンを搭載した旧型スクランブラーで、現在の水冷スクランブラー900とは仕様が異なる。
クラシックバイクのある日常
愛車の写真や、走りに出かけた日の思い出を載せているんで覗いてみてね。